W.カーティス著、沢村明他訳
「近代建築の系譜−1900年以降 上巻」、鹿島出版会、1990年
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第四章
第四章 イギリス、アメリカのア−ツ・アンド・クラフツ理念

アーツ・アンド・クラフツとは、この現代社会における簡素さや誠実さ、正直であることへの我々の感覚を治療しに呼び出されたものである。もしこれが完治すれば、我々の文明生活全体は奥底まで揺り動かされるであろう。我々の運動の最終目標は、ただ住宅や長家の見てくれを変えようというのではなく、世代全体の性格に直接反響を及ぼそうというのである。もしこの新しい波が本物であれば、そこには、独自の、長続きする様式が現われるだろう」(H・ムテージウス、1907年)

ヲ合理主義とは異なる流れ
・霊感を吹き込まれた
職人の技量によって「19世紀諸様式の堕落」は打ち消されるだろう。
・本物の建築とは清新な
道徳的美徳を直接表現することを通じて達成されるだろう。
産業革命が、社会構成や建設手法、文明の道徳的基盤に及ぼした衝撃を憂れう
・それぞれの土地の
土着的な素材や用法は、近代的な実践家によって好ましい利用へと翻訳されるべき。

ウィリアム・モリス
最も美しいものを博物館の陳列棚から取り戻して日常用途の工芸品や道具と再び結び付けることで、全体が統合された新しい時代への露払いとなることを望んだ。

エドウィン・ラッチェンス
インスピレーションの源泉の幅広さや想像力の豊かさ、風土の用法を自分の利点に取り込む機知に富んだ能力を有す。
土地の工芸と素材とを用いることを強く信念とした。その理由は、実践的であるということと、また住宅とその建築環境ないし自然環境との調和をもたらすのに信頼できるため。
※彼のことを、単なる折衷主義者で、エキゾチックな週末の生活を求める大金持ちのパトロンたちの嗜好を満足させるため、歴史というずた袋をひっかきまわしたのだ、などという者がいるが、まったくの誤りである。

彼の建築の根底にあるのはプロポーションの制御感覚と構成原理である。才知のひらめきの下に、真面目で思索深い意志があり、究極には古典デザインの確実性を求めていった。

それ以上に、彼の意匠の統一性は、幾何学的モチーフの反復と軸線との賢明な結合によって達成されていた。アーチが半円形階段へと変じ、ドームや壁のくぼみに再発見され、またモザイクで縁取られたエドワード朝風の豪華な半球形の風呂になるように、平面や立面、ボリューム、更には庭園にまで、「テーマ」が演じられている。

フランク・ロイド・ライト
彼は疑いようもなく、アーツ・アンド・クラフツ理想に影響を受けたもっとも独創的な建築家であり、しかし独創的であるが故に、影響を受けたという点ではあまり典型的とは言いにくい。
1901年の私論「機械の芸術と工芸」でライトは、「機械はここに根づこうとしている」と認識し、またこれが芸術家にとって建設テクニックだけでなく、その芸術家が建てようとする社会の全体組成にも影響するだろうと認めた。

アーヴィン・ギル
住宅において鉄筋コンクリート造を早くから主唱。無装飾な簡素性。ギルは自己のデザインの幅広い積み重ねを、自然構造に相対するものに成さんと求めた。
「我々は自分の住宅を、単純に、実質的なものに、大きな丸石のように建てるべきである。そしてその装飾物を大自然へと託すのだ。そこでは、苔に色づけられ、嵐に削られ、草地の石のように蔦と花が影を落として、親しみやすく輝かしいものにしてくれるだろう。私はまた、住宅はもっと内実あるように建てられるべきだと、絶対に清潔に作られるべきだと信じる。大切でもない装飾物のコストが施行に使えれば、もっと寿命の長い、もっと品位のある住宅を手にできるだろう。」(A・ギル、1916年)

ヲギルの「大自然」解釈は、感受性豊かな配置とか風雨に現われる効果への関心よりも奥深い。ライトやサリヴァンのように、最良の幾何形態は自然の構造や展開を抽象化したものであると、彼も信じていた。また、自然における形態の目的への合致を、芸術の形はぜひ見習うべきだとも信じていた。ギルの心中では、建築構成法の基礎は、自然の特色に似たものであり、これこそ見るものの感動へ的確な方法で訴えうるのであった。

どの芸術家も早かれ遅かれ、個人として直接かたをつけざるをえない四つの原則がある。まず、線を力強くすること。地平線から写した真直ぐな線は、偉大さ、威厳、気品といったものの象徴である。次に天空を模したアーチは、情熱、崇敬、上機嫌を表す。また円は、完全さ、動き、進歩の美であって、これは水の流れを行く石から理解できよう。そして四角形は、力、公正、正直、安定のシンボルである。これらが、建築言語の基本であり、ユニットであって、これらなしには、建築の直接表現や息吹ある表現は出来ないのだ。」(同上)
、19世紀の「様式」から近代建築形成への推移という広大な構図の中で、ア−ツ・アンド・クラフツ運動の20世紀への継続は、局部的な役割を演じ、傑出した質の個人作品を奮い起こした。型にはまった様式というよりもむしろ、広く分かち合われた関心であった。

1920年代の白く四角い建築をギルがいくつか表面的に先取りしていたが、それらはヨーロッパにはほとんど知られなかったし、彼の展望は欧州のものとは全く異なっていた。実際のところ、ヨーロッパで近代運動を作り上げた世代は、手工芸への情熱と逆方向を目指していたのである。

とは言え、ア−ツ・アンド・クラフツ理想は、簡素性、正直さ、必須性といった価値を強調することによって、詰まっていた滓を洗い流す重要な機能を果たした。それが基盤となって、ドイツ工作連名という組織が、機械化に対して、更に正面から立ち向かおうとするのである。

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